東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2012年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2013年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2013年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2013年度の目標 >> 泌尿器癌免疫治療部門

泌尿器癌免疫治療部門 活動報告・2013年度の目標

泌尿器系の悪性腫瘍に対する免疫治療の臨床研究部門としての活動も3年となり、本年で最終年度となりました。平成24年1月から12月までに、のべ18人の泌尿器癌患者に対して、計100回の自己活性化γδ型T細胞を用いた細胞治療を行いました。外来班や輸血・細胞プロセシング部の先生方や、ケアルームスタッフのご協力で、重篤な有害事象もなく、施行できましたことを感謝いたします。また、研究的な治療にもかかわらず参加された患者さんにも感謝しております。

効果については、すべてを臨床試験として行っているものではなく、患者個々の背景が一律では無いため、全体としての臨床効果を評価するのは困難ですが、個々の患者では確かに有効そうだなという方もおります。2症例を紹介しますが、現在53歳男性の前立腺癌の患者さんは、がん研有明で平成22年7月にT4N1M1(膀胱浸潤のため水腎症、肺と骨転移),iPSA143, GS4+5と診断され、CABを開始しましたが、初回ホルモン療法もPSA nadir は8.1で、同年11月には再上昇、平成23年8月にはPSA43.74となりドセタキセルが導入され、免疫療法の可能性について女子医大に9月受診されました。若年でPSも良く、平成23年11月よりDOCに併用して自己活性化γδ型T細胞療法を開始し、今年の3月14日までに計22回行いました。今年に入ってからはPSA1前後で安定し、診断から2年6ヶ月経過していますが、ご自身の仕事もこなされ、3月14日のPSAは0.84です。また、69歳女性の腎盂癌術後多発肺転移の患者さんは、2010年7月に右腎尿管全摘を施行し、UC, pT3N0M0で、2011年1月に多発肺転移が見つかり、GC療法4コース、MVAC2コース、GC+パクリタキセルを行ったところで2011年9月21日当科初診です。肺転移は最大1.5cmが多発という状態で、PS良く、2011年12月8日より自己活性化γδ型T細胞療法を月1回の外来化学療法に併用して開始しました。2013年2月28日までに14回行い、画像で見れば大きくなっている転移部位と縮小している転移部位があり、RECISTではPDと判断される状況ですが、先月も化学療法の合間にハワイに行ったりとQOL、ADLともに高く保たれています。すべてがこのような患者さんだと良いのですが、化学療法との併用は良さそうな印象です。自己活性化γδ型T細胞単独ではどうかと言いますと、例えば77歳男性のRCC患者は、2010年11月にラパロ腎摘を行い、papillary RCC type 2, T1b, 腎静脈断端癌有りという状態で、再発予防に自己活性化γδ型T細胞療法を2011年1月20日より開始し、術後2年間の予定で、2013年2月15日までに計25回投与しました。投与開始前は末梢血中のγδ型T細胞が0.41%と非常に少なかったのですが、2月15日には18%と増加し、細胞実数も約40倍に増加しており、幸い再発を認めておりません。細胞療法単独でも癌細胞数が少ない状態では、有効と思っています。さて、現在の活動状況ですが、先進医療として始まった進行腎癌に対する自己活性化γδ型T細胞とゾレドロン酸、インターロイキン2を用いた免疫療法は、患者リクルートの困難さと一昨年生じた有害事象の件で、厚労省と文科省との話し合いで、取り下げることにしました。申請するのも大変でしたが、取り下げも皆が納得する取り下げ理由を考えなければならず、書類作成も大変で、正式にはまだ受理されていません。こちらは、プロトコルを検討して再度申請しようと思います。臨床試験としては、前立腺全摘後のPSA再発の患者に自己活性化γδ型T細胞を投与する試験が走っています。また、新規に表在性膀胱癌に対する自己活性化γδ型T細胞+ゾメタの膀胱内注入療法を準備しているところです。腎癌を取り下げたので、この二つは文科省の橋渡し研究として、あと1年で結果を出さないと行けない状況になり、ちょっとあせっていますが、何とかなるでしょう。

昨今のiPS細胞を用いた再生医療や幹細胞を用いた細胞治療、またわれわれの行っている免疫療法を含めた大きな枠組みとしての細胞療法に対する今後のあり方について、現在専門家会議で大いに議論されています。いままでのガイドラインではなく、法律として規制と国策として推進を行う方向に進んでいます。おそらく2013年の夏頃には、細胞治療に関する法律の骨子ができる予定で、今後の動向に目が離せない状況です。

来年度の目標は膀胱癌と前立腺癌に対する臨床試験を終了し、新たに先進医療申請の準備をしたいと思っています。また、国策としての細胞療法の動向も見極め、きちんと対応しようと思います。泌尿器癌免疫治療部としての活動は終了ですが、細胞治療は継続していきます。

小林 博人

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