大学院研究室　2022年度の活動報告および来年度への抱負

今年度の研究活動内容は、基本的には前年度を引き継いだ内容でした。

（1）泌尿器科腫瘍の基礎研究
先生方のご協力により、既に多数の臨床検体が保存されています。臨床症例が豊富な当院の特徴を生かして、臨床検体の解析に重きをおいた研究を行っており、臨床に結びつく研究ができるようになることを目指します。既に多数の研究機関との共同研究を開始しており、国立がん研究センター研究所免疫創薬部門との共同研究にて腫瘍免疫微小環境の研究を、国立がんセンタートランスレーショナルインフォマティクス分野（山下理宇ユニット長）および星薬科大学（牛島 俊和教授・学長） との共同研究にて透析腎癌の網羅的遺伝子解析を、カン研究所との共同研究にて腫瘍の免疫細胞の解析を、当院病理診断科及び横浜市立大学分子病理学講座との共同研究にて腫瘍の臨床病理学的特徴についての研究を、筑波大学腎・血管病理学との共同研究にて透析腎癌の網羅的糖鎖解析に関する研究等を行っています。

（2）腎移植領域の基礎研究
免疫寛容を誘導した後に臓器移植を行うことで、免疫抑制剤の長期的な内服が不要になります。REGiMMUNE社との共同研究では、NKT細胞の活性化に着目した低侵襲な免疫寛容誘導法（マウスモデル）を開発しました。日本初のヒト免疫寛容誘導による腎移植を成功させるべく、研究を継続します（移植免疫寛容誘導の研究）。カン研究所との共同研究では、腎移植治療と虚血再環流障害に代表される臓器保存に関して、新規薬剤を用いた研究を行っています。動物モデルで得られた成果を元に臨床応用を目指します（新規薬剤による腎移植治療・臓器保存に関する研究）。先端生命医科学研究所（TWIns）との共同研究では、細胞シートを用いた治療法の開発を行なっています（細胞シート工学を利用した腎移植治療法の開発）。

（3）その他の基礎研究
アポトーシス抑制因子による制御機構はさまざまな分野で注目を集めています。AIM医学研究所との共同研究では、アポトーシス抑制因子と泌尿器科疾患の関連性を調べ、新たな予後予測マーカーや治療法の開発を目指します（アポトーシス抑制因子と泌尿器科疾患の研究）。また、人工知能（AI）を活用した研究を行っています（AI研究）。

本年度は、総合医科学研究所・先端生命医科学研究所・実験動物研究所・研究推進センターをはじめとした学内の各組織にご協力いただき、現研究室に囚われずに様々な形で研究できるような体制作りを目指しました。その中で、優れた技術や発想、素晴らしい先生方との出会いがあり、大きく成長できた一年だったように思います。現在5名の大学院生が在籍しており、来年度は1名の新規大学院生を迎え、6名の大学院生で研究を継続します。大学院生の先生方には、何より研究の楽しさを味わっていただきたいと思っています。

来年度の目標は、競争的研究資金の獲得、大学院生の獲得、研究室の縮小（施設利用料が高額のため）です。

次年度も、精一杯頑張ります。皆々様の御指導の程、宜しくお願い申し上げます。

石井瑠美