東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2010年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2011年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2011年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2011年度の目標 >> 腫瘍部門

腫瘍部門 活動報告・2011年度の目標

腫瘍班としての2010年の活動報告ですが、臨床および学会発表など充実したい1年となりました。スタッフ、病棟の先生方に感謝申し上げます。これまで、下部尿路内視鏡部門が別にありましたが、結石、排尿障害が別に独立しており、またTURBTについては腫瘍部門となるため、昨年度までは別に活動報告を書いておりましたが、本年度からは、TURBTまでを含めて腫瘍部門とさせていただきます。

2009年度の手術室のスタッフ不足のため手術枠の削減がありましたが、2010年度は通常の体制でスタートができました。2009年度の枠制限の時はやむを得ず、上部尿路腫瘍を優先して膀胱全摘を関連病院や他院にお願いする方法をとりました。しかしその結果として、週刊朝日の「いい病院手術数ランキング」では膀胱全摘のランキングから落ちる事になりました。患者でもその結果を知っている人がおり、膀胱全摘を勧めると症例数の多いところでの手術を希望し転院を望むケースが見られるようになってしまいました。また病棟では膀胱全摘の術後経過を知らない後期研修医もでてくるなど、教育という点でも大きな問題でありました。2010年度は少しずつ膀胱全摘も増えてきており、11例に行っておりますがまだランニング外です。ランキングがすべてではありませんが、患者が医療機関を判断する場合は、このようなマスコミを介した情報に頼らざるを得ないところも事実であり、一度activityを落としてしまうと、それを取り戻すのは大変であることを示しております。症例数をある一定のレベルからは落とさないようにする事の重要性を実感いたしました。

腎癌は、2009年よりも25件ほど多い164件の手術を行い、症例数ランキングでは2位が90例前後でしたので、ダントツでの日本一です。当科の特徴は、腎部分切除術が93例と、腎癌手術症例の半数以上に腎温存を行っている事になります。2010年はT1a(4cm以下)では腎温存手術の割合が92%、T1b(4〜7cm)では70%になっております。腎温存手術は、CKDの予防による非癌死の抑制、良性腫瘍の可能性もあるなど、そのメリットは大きいです。当科での積極的な腎温存の姿勢は、いろいろなところから注目されており、方法、成績、腎機能などについてさらに学会報告、論文発表へとつなげていきたいと思います。このように当科での手術を希望する患者数はさらに増えることが予想され、できれば今年は腎癌疑いの症例も含めて200例に到達すればよいかと考えております。鏡視下腎部分切除も2010年は29例となり、阻血時間、腎機能などもほぼ安定した成績が得られるようになってきていると思います。今後は、腎洞に接している症例にも適応を拡大していきたいと考えております。また第2世代への継承が必要となってきますので、そういった点も考慮しながら手技を確立していきたいと考えております。

鏡視下手術のトレーニングでは、今年も6名が受験し全員合格とすばらしい結果となりました。審査員の基準も年々上がってきて、合格率も下がってきている中、本院関連4人、東医療センター関連2人の合計6名もの合格者がでている施設はおそらく他にはないと思います。手術件数もそうですが、われわれの教育のレベルも水準にた達していることを示すもので、今後の指導でも自信を持って良いと思っています。また今回合格された先生がたは、今後は指導する立場になりますので、その点も十分意識して手術に当たって下さい。

上部尿路腫瘍では、引き続き、リンパ節転移をふくめた臨床研究を継続しており、昨年はUAでもBest posterとして評価されました。そろそろ前向きで継続したリンパ節郭清の研究の第一報を出したいと考えておりますが、その時期を現在見極めているところです。論文採択については、多施設でデータを出したグループが幅をきかせ苦しい状況が続いておりますが、それにめげずにがんばっていきたいと思います。

膀胱癌では、少しずつ2年前の影響から回復させるべく努力しておりますが、4月までの状況と、今後の予定を見る限り、昨年よりも多い症例数となりそうで、ふたたびランキングに載るぐらいの症例数(16〜17以上)まで戻りそうな印象です。また治療の工夫では、現在全例でneo-adjuvant chemotherapyを行っております。これは本院における手術待機期間が2ヶ月を超えること、neo-adjuvantのエビデンスがしっかりと示されていることによります。これによって、cN0と思っていた症例が、pN2であったという事は無くなったように思います。またTURBTについては、2011年度より原則青山病院で行う事になりました。現在TURBTは年間に150例ほど行っており、このほとんどを移す事になります。懸念している事は膀胱全摘の二の舞にならないようにということです。現在行っている術後BCG治療やre-TURBTの成績の解析など進行中の研究もあり、術後はまた本院で経過観察する事をしっかり話しておく必要があると思います。

最後に、助教、研修医の先生方へのメッセージですが、学会発表でいくら賞をもらったりしても症例報告、論文にしないかぎりは全く意味がありません。学会発表だけなら初期研修医でもできます。そのレベルでよいのならもう発表もしていただかなくても結構ですが、泌尿器科医としてただ膀胱鏡ができる、TURができる、ただ外来ができることだけを希望して入局した方はいないと思います。知識を持った泌尿器科医になるためには、発表したものを論文にする事で、参考文献を読み、これを総合してそのデータあるいは症例の持つ意義について考察を加えていくわけです。ようやく少しずつ論文を書こうとする先生が出てきている事はうれしい事ですが、まだまだ十分ではありません。以前私が長岡に出張中に新潟大学の先生に言われたのは、自分の学年+1の数の論文(症例報告)を書くのが最低限の目標であるといわれ、これまでもそれを下回らないようにしてきました。現在いろいろな先生に演題をあげて発表してもらっていますが、少なくとも1年に一編を書くような目標をもってください。日常診療は大変ですが、バイトの時間、当直中にゴルゴ13を読む時間を、書く方に回すような意識を少しずつもっていただけたらと思います。とくに今年は7人も新しい先生が増えていますので、意識の高い先生がいると上の先生でも抜かれてしまいますよ。お互い切磋琢磨しながらがんばっていきましょう。

近藤 恒徳

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