東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2010年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2011年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2011年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2011年度の目標 >> 前立腺腫瘍センター

前立腺腫瘍センター 活動報告・2011年度の目標

飯塚が実務を担当し2期目にあたる昨年度は病棟医長業務との併任で、現状維持が精一杯となり力不足を実感した一年でした。

限局性前立腺癌に対する腹腔鏡下前立腺全摘術は諸先生方にサポートを頂き術者として飯塚が主に施行しています。年度後半からはある程度安定して独立して施行できるようになりましたが術者不足であった年度前半が響き、年間を通しての症例数は41例と減少を余儀なくされました。現時点では大きな合併症も無く施行できるようになっており、ようやく術式も安定してきております。2月以降、週2-3例のペースで手術症例も増えてきており年間症例数の増加も期待できる状況です。現在の課題としては神経温存とリンパ節郭清があげられます。神経温存の術式に関してはintrafascial approachとveil techniqueを基本とし、症例によっては部分温存を試みることで適応拡大をする方針ではあります。しかしながら現時点でも温存の適応に関しては確立された基準が無く、摘出検体のmappingにより検討を加えより具体化していく過程にあります。また、リンパ節郭清に関しては現在の後腹膜アプローチでは郭清範囲に限界があり、特に高リスク前立腺癌に対しては拡大リンパ節郭清が標準ともいえる現況では術式の改善が必要となってきております。経腹アプローチの導入もしくは開腹手術の選択により対応を試みたいと考えています。

2011年度最大の話題としては手術支援Robot、da Vinci systemの導入です。震災の影響で不透明な状況では有りますが、多大なるご支援のもと新年度より導入の予定でいます。導入の遅れていた東京都内でも複数施設で導入が決定しておりその流れになんとか乗っていける状況となりました。まずは前立腺全摘からの導入となろうかと思いますが、da Vinciにより前立腺全摘におけるリンパ節郭清の手技向上も期待したいと考えています。

一方放射線療法に関しては外照射(強度変調放射線療法(IMRT)+3D-CRT)66例、小線源永久挿入療法48例、高線量率組織内照射(HDR)38例と増加傾向でした。内外の著名人が放射線療法を選択することで治療法を決めて初診される患者さんも増えてきている印象です。実際、低リスク症例には小線源永久挿入で非常に良好な経過の方が多く、また、cT3aやcT3bなどいわゆるstage C症例ではHDRないしIMRTが非常に高い制癌効果を示しています。しかしながらこれら症例の観察期間は未だ2年程度であり、原則中リスク以上の症例には内分泌療法を併用しているため、治療効果の判定にはなお経過観察を要するものと考えています。

外来診療においては前立腺腫瘍外来を毎週金曜日午後に設定していますが、正規の予約枠が2ヶ月先までいっぱいとなってしまっておりご紹介を頂く近隣の先生方、関連病院の先生方に多大なご迷惑をおかけしております。なるべくご紹介の患者さんを優先するよう対応しておりますが、前立腺癌患者そのものの増加もあり全ての症例を前立腺外来で対応することは不可能です。喫緊の課題として対応を検討しておりますが、院内症例に関しては諸先生方のご協力も頂きたく改めて御願いを申し上げます。

がん診療拠点病院である東京女子医科大学としては地域連携をすすめる流れに有ります。がん対策推進基本計画によりがん診療拠点病院は5大がん(胃・大腸・肝・肺・乳)の地域連携パスを整備することが求められています。東京都において5大がんに前立腺がんを加えた6がんの地域連携パスが運用開始され、女子医大でも立ち上げ準備がすすんでいます。治療に伴うパスとPSA検診パスの2種類が用意されており、近日導入の予定となっています。これらにより多少なりとも外来診療の効率化につながればとおもいます。

2011年度の目標としてはまずはこれまでの業績をまとめて論文化をはかることを第一の目標としたいと思います。第二に次世代術者の育成。第三にda Vinci導入後の前立腺全摘手術のstrategy(手術適応、術式選択、神経温存の適応、リンパ節郭清の範囲など)の確立。をあげたいと思います。

今後とも御指導御鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。

飯塚 淳平

[ 前のページへ戻る ] [ ページトップへ戻る ]

Copyright (C) The Society of Urological Disease at TWMU All Rights Reserved.